中小企業金融公庫 最新レポート

「わが国自動車部品製造業の現状と今後の方向性」について

 中小企業金融公庫総合研究所では、海外を中心に日本車に対する需要が高まり、日系自動車メーカー等が生産拠点のグローバル再編を進める中で、国内自動車部品メーカーがどのような状況にあり、今後、どのような事業展開が望まれるのか、という点について分析・考察を行い、レポートを取りまとめた。
 
1.わが国自動車部品製造業を取り巻く状況
  2000年以降の日本車の国内外の需要動向をみると、国内が低迷する一方、海外は堅調となっている。 このような日本車に対する需要の変化に加え、日系自動車メーカーの海外生産拠点の強化もあって、日本車の生産は、国内で伸び悩む一方、海外では急拡大している。
 こうした中、国内自動車部品メーカーにおいては、国内のみならず海外における競争力を維持・向上させるためのコストダウンや技術革新をこれまで以上に推進する必要があると考えられる。

2.国産部品・部分品に対する国内外の需要及び国際競争力の現状と動向経済
産業省「機械統計年報」及び「鉄鋼・非鉄金属・金属製品統計年」、並びに財務省「貿易統計」に基づいて2000年以降の主要自動車部品・自動車用金属製部分品の生産数量変動率、貿易特化係数、輸出額増加率等を算出し分析してみると、次の点が指摘される。         
①「高精度・高強度・高耐久性・高性能等を要求される部品・部分品」、「精密素形材加工等加工難度の高い部品・部分品」については、国内・海外とも需要は堅調で高い競争力を堅持している。

②環境対策・低燃費化、安全性強化、走行性能の向上等に不可欠だが精度・品質等の面で現地調達が困難な部品・部分品については、国産部品・部分品への回帰がみられる。        

③「労働集約的で低付加価値なアセンブリ部品」については、完成車メーカーや1次部品 メーカーの海外生産強化等を背景に、現地調達化が進展するとともに低価格製品に対する国内需要の拡大もあって、国産部品・部分品に対する需要は低減し、国内外における競争力は低下しつつある。         

3.中小自動車部品メーカーの取組みにみる国内生産の方向性と課題 「高精度・高品質の素形材加工製品等加工難度の高い部分品・部品」を製造する中小自動車部品メーカーにおける具体的な事業展開をみるため、自動車部品向け各種素形材加工を手掛け、差別化・高付加価値化を実現している4社の事例を調査した。          
これらの取組み事例をみると、
①人材の育成や
②金型・治工具の開発・設計・製作プロセスの拡充、
③生産加工設備の改善・増強といった経営資源・生産能力の拡充を図りつつ、以下の点に積極的に取り組み、技術革新や創意工夫、合理化・効率化を推進していることがわかる。         
(1)さらなる効率化・高付加価値化に向けた生産・加工体制の再構築、新製法の導入        
(2) 新製品・新製法の開発、連携・コラボレーション等による顧客ニーズの多様化・高度化への対応 
世界規模のメガ・コンペティションに晒され、終わりなき技術革新・コストダウンを迫られる中で、「高精度、高強度、高耐久、高性能を要求される部品・部分品」等の生産に特化し、海外製品との差別化・棲み分けを図ることによって、国内外での競争力を維持・強化していくことが不可欠と言える。
<レポート詳細>
    http://www.jasme.go.jp/jpn/result/c2_0502.pdf